寮長のまなざし69クレイジー・ウオーカー

公開:2025/6/28更新:2025/6/28

 期末考査も終わり、昨日は中学生の全体学習がなかった。案の定、「今日は全体学習ありますか?」と聞いてくる寮生もチラホラいた。なんでも課題が全部終わって、やることがなくなったと言ってくる。やることがないと言ってられるのは今だけで、高校生になったら、「中学生の頃はよかった」と懐かしむのだろう。

 昨日は男子寮生の部屋チェック、本日は女子寮生だったので、その話を書くつもりだったが、受付にいるとある高2男子寮生が話しかけてきたので、その話題にしたい。

 いわく、「今日は5時間で28キロ歩いてきた」という。平地の歩行速度は1時間約5キロが平均だから、ずいぶん速いのではないかと問うと、途中、ちょっと走ったとのことだった。何でも普段、運動不足だから歩けるときに歩きたいとのことで、富山のドン・キホーテに行ったことがなかったので、行ってみたかったのだという。何人かの寮生もバスで現地に行ったため、現地で合流するのも目的だったらしいが、結果的にではあるが、28キロ歩くというのはクレイジーである。

 何年か前の年末に富山駅前で卒業生と飲み会をして、帰りに月岡駅まで富山地方鉄道で戻ってくるつもりが、間違えて違う電車に乗り(寮生のことあまり悪くも言えない)、せめて五百石駅で降りればそこそこの駅だからタクシーくらい乗れるかもと降りたが、人もほとんどおらず、タクシーもいつ乗れるかわからない状態だったので、そこから歩いて帰ることにした。その時は疲れたら途中でタクシーに乗ればいいやと思っていたが、富山は東京と違って、流しのタクシーに乗ることができないらしく、そもそも空車のタクシー自体が走っていなかった。

 スタートからスマホの充電も残り少なく、途中で充電が切れたら町なかで遭難するかもと思い、また、歩道のない暗い道を歩くと車にひかれても洒落にならないと思い、歩道のある道を歩くために、山室まで一旦戻ってから、自宅方面へ歩くことにした。歩道もあり、安全だったが、この時は警察に職務質問されて、家まで送り届けてくれないかなと不遜なことを考えていたが、そんな時にはパトカーも私の横を通り過ぎてくれない。

 夜の12時ごろに駅を出て、家に着いたのが朝の6時過ぎだったと思う。辺りも明るくなり、酔いも途中からすっかり冷めて、ずっと考えていたのが、「二度とこんなことするもんか」たっだ。私は二度と6時間歩こうとは思わないが、寮生には歩くのが大好きなクレイジー・ウオーカーがいる。