寮長のまなざし65不安を煽るニュースの中で

公開:2025/6/24更新:2025/6/24

 月曜の朝は雨が降っているとグズリ系が出て来て、学校に行っても早退者もいる。寮が学校に近い長所はすぐに登校できるだが、それは欠点としてすぐに戻って来れることと表裏一体である。明日から期末考査ということもあり、どことなく寮内にも緊張感があるようだが、試験があることで学びを深める効果はあるように思う。

 受付前のモニターにニュースを流し始めたことで、アメリカがイランの核施設を空爆し、ホルムズ海峡の閉鎖の話も流れてくる。大人たちは、どうなるのだろうと不安を感じているが、寮生にとっては「何のこと?」という雰囲気であり、鹿児島で噴煙が昇り、繰り返し地震が起こっても、富士山のふもとの河口湖の水位が3M減っても、何の影響もないようである。

 カナダの研究チームが小さな森全体をネットで覆って、スズメの天敵を締め出し、スズメにとって安心できる環境を作りだしたあと、森の中に目立たないようにスピーカーを数台設置し、森のある部分では天敵の鳴き声を、別の部分では穏やかな自然音を流す実験をしたという。すると、「不快な」鳴き声を聞いたスズメは自然音を聞いたスズメより、生んだ卵の数が40%少なく、卵も小ぶりで、ふ化した数も少なく、生き残った雛も脆弱だったという。この実験結果は実際の脅威がなくても、不安感を煽るだけで生態系に影響が出ることを示しているという。

これが、人間にも当てはまるそうで、日々不安なニュースに囲まれていると社会不安は増大していくが、明るいニュースや楽しいニュースばかりだと、ニュースの視聴率も上がらない。

 風が吹けば桶屋が儲かるではないが、日々のニュースは私たちの生活に影響があるからニュースとなっているわけで、世の中の動きをウオッチすることは必要だとは思うが、不安を煽るニュースに触れずに飄々と過ごせるのも生き方としては幸せなのかもしれない。

 以前、学校の出前授業で、富山県の県議会議員の方が来られて、「政治に無関心でいられても、政治に無関係ではいられない」という言葉を残してくださったが、ニュースに関心がなくても平和で過ごせている今の日本の現代が稀有な時代なのかもしれない。