寮長のまなざし㊵誰がために寮はある(後)
公開:2025/5/27更新:2025/5/27
短期入寮生に朝会えたので、「どう?」と聞くと「朝がゆっくりできる」と嬉しそうだったが、環境が変わったためか、少しぐっすり眠れなかったようだった。夕食後に再度声をかけると「まだ、楽しい」と微妙なリアクションであった。毎日宿泊学習だと思うが、楽しみ過ぎても困るのだが。
職員室に行くと、昨日の高校サッカーの様子を教えてもらえた。1点目は助っ人の寮生がスピードを生かしてツータッチほどで前線へパスを出し、素晴らしいアシストだったとか、2点目は寮生がデイフェンスの裏を突き、キーパーの逆もつき、狙って決めたとか、活躍ぶりを教えてもらった。寮に戻って寮生に話すと二人とも照れ臭そうだったが、充実感は得られた顔をしていた。最後の10分までは互角に近い戦いだったとのことだった。
さて、寮については徒然るままに書いたのが3回目となる。学校の教育のメインは寮ではなく学校だが、学校の教育を安定して受けるために、寮は過ごしやすい日常を提供できればいいと思っている。
そうなると寮教育が存在しなくなり、寮教員や寮監は単なる管理人になってしまう。しかしながら、中学生に高校生と同じように自己を律して過ごさせるのは困難である。スマホやiPadを使い過ぎないようにコントロールしたり、部屋の片づけをさせたり、身支度にアドバイスしたり、時間を守るよう指導したり、規則正しい習慣をつける手助けをしたり…。一つ一つの振る舞いや行動が将来につながり、同世代の仲間と時間を過ごすことで、公共性や社会性の核を学ぶ機会を体験してもらいたい。
ダメなものはダメで、間違いは間違いとしっかり指摘してあげること、嫌がられても苦言を呈してあげることが、寮生たちへの未来への贈り物になると信じて、粘り強く語りかけ続けなければならない。
これまでの寮の雰囲気もあったので、この2ケ月はニコニコしながら寮生の様子を見てきた。私を含めて人は間違いや失敗から大いに学ぶものだし、ましてやまだ12歳から17歳の若人なんだし。だから、生徒が改善したいと言ってきたことはすぐに要望に応えた。中学生の学習室の座席を希望制にしたり、高校生の自習室の座席を決めたり、私物を置くのを許可したり、2週間に1回あった全体集会をなくし、クラスルームの配信に変えたり…、これは毎朝、生徒の登校の様子を見ているので集まらなくてもいいと思ってだが。保護者の元から離れているので、保護者のかわりにはなれないが、せめて少しでもサポートしてあげられればと、寮生全員との面談をすべく、高校3年生から順に面談も始めた。
寮は寮生のためにあり、寮生の未来へ贈り物をするためにある。今後も楽しくもあり、規律ある場所にしていきたい。なので、これからは時間を守らない、消灯後に他の人の部屋に行くなどの行動は厳しく対処することになると思う。