寮長のまなざし㉖無気力のメカニズム

公開:2025/5/14更新:2025/5/14

今日は昼一でラジコン草刈り機の始動に立ち会った。予想以上のスピードで学校敷地整備の大きな味方になること間違いなしである。
学校の広大な敷地内には週末ごとに保護者の会の方々に草刈りに来ていただいており、卒業した生徒の保護者もその輪に加わっていただいている。誠に感謝しかありません。
そんな方々の作業を軽減しようとある保護者の方からラジコン草刈り機を寄付していただいたのだが、人類の道具を改良する技術はすごいものだと思う。予想以上の性能であった。ラジコン草刈り機、本当にありがとうございました。

本日で中学生と高校3年生の中間考査は終了したのだが、寮内の倉庫に開校当初の古い資料が満載されていたので、片付け作業を行った。汗だくでいたものだから、ある男子寮生が「先生、ジョギングでもしてきたの?」と聞いてきたが、この体型にジョギングは危険だとは生徒は考えないらしい。まるで引っ越し業者になった気分だったが、道理で引っ越し屋さんはスリムな人が多いと合点した。こんなに身体を酷使したら、どんなに食べても太るのは難しいとは思う。

倉庫に満載された書類で心が折れそうになりながらも、累計6時間くらいかけて最後までやり遂げることができた。膨大な物量にも心折れることなく、最後までやり遂げることができたのも、自分が無気力になるメカニズムを理解していたからかもしれない。

現在はこんな実験は動物愛護の観点からできないと思うが、次のような実験の話を読んだことがある。四角のスペースの周りに犬が飛び越えられる程度の壁で囲み、四角のスペースには犬が嫌がるレベルの電気を流すと、犬は即座に壁を乗り越えて、逃げる行動を取る。その壁の高さを少し高くしても、犬は何とか、壁を乗り越え、逃げようとしたそうだ。ところが、犬がどう頑張っても越えられない壁の高さに囲まれた時は、しばらく歩き回った後に、座り込んで何もしなくなったそうである。電気が流れて不快で離れたいはずだが、座り込んだまま、動かなくなったそうである。
心理学の世界ではこの行動を無気力のメカニズムと捉えて、人間も動物も到底無理だと感じる目標を目の前にした時には、やる気がなくなり、無気力となってしまうという。だから、大きな目標を掲げずに、スモールステップで達成感を味わった方が、意欲的に物事に取り組めることになるという。このメカニズムを理解しているためか、水泳やピアノはスモールステップで目標設定されており、東大合格者の小さい頃の習い事に水泳やピアノが多いと聞いたこともある。

作業を全部やり遂げたことが、自信の一つとなり、次の目標に向かう礎となる。寮生も来たる大学受験に向けても、途中経過の目標を少しずつ決めて一歩ずつ自信を積み上げる。目標設定を的確にすることが、よりよい生活するための一助になると思う。